なぜ漏れた不正アクセス・情報漏えいの原因と再発防止

ディップ株式会社 / バイトル・バイトルNEXT

バイトル・バイトルNEXT 会員のメールアドレス最大 388万件

最終更新 2026-10-11

概要(公表された事実)

公表主体ディップ株式会社
業種情報通信業
経緯
判明: 2026-10-06
第1報: 2026-10-09
件数最大 3,885,771 件
漏えいの「可能性」がある件数の上限で、確定値ではない
漏えいした情報メールアドレス
含まれない情報氏名、電話番号、パスワード、クレジットカード情報
二次被害ネット上への流出・不正利用は確認されていない(第1報時点)
報告先個人情報保護委員会、総務省関東総合通信局、警察(相談)

分類

侵入経路自社実装の不備:種類は非公表
システムの一部機能の仕様の不備を突いた、海外からの不正アクセス
MFA不明
委託先・SaaS 経由公表文では触れられていない
原因の公表度一部のみ公表
判定判定に必要な事実が非公表
根拠: 自社実装の不備とされたが、脆弱性の種類が公表されていない(判定ルール)

根拠となる公表文の記載

「システムの一部機能における仕様の不備」
侵入経路 の根拠 / 出典

何が起きたか(エンジニアによる推定)

この節は公表された事実ではなく、公表文から読み取れる範囲の推定です。

ディップは機能名も手口も出していない。以下は公表文の言葉から読み取れる範囲の推定。

「仕様の不備」という言い方は、ライブラリの脆弱性や設定ミスではなく、機能の作り(設計)そのものに穴があったことを示す。そのうえで手がかりが3つある。

  1. 漏れたのがメールアドレスだけ。DB を丸ごと抜かれたなら氏名や電話番号も一緒に出るはず。1つの機能が返すデータにメールアドレスだけが含まれていて、それを外から大量に取られたと考えるのが自然
  2. 「最大」388万件という上限つきの数字。取られた実数ではなく「その機能から到達できたアドレスの総数」を数えていると読める
  3. 初動が「海外からのアクセスの全遮断」。単発の侵入ではなく、海外の IP から同じ機能へ大量のリクエストが来ていた

この3つに合う典型的なパターンは次の2つ。

パターン 仕組み OWASP の分類
他人の ID を指定すると、その人の情報が返る(IDOR/BOLA) API が GET /api/members/12345 のように会員 ID を受け取り、リクエストした本人のものかを確かめずに返す。ID が連番なら 1 から順に回すだけで全件取れる API1:2023 Broken Object Level Authorization
画面に出していない項目までレスポンスに入っている(過剰なデータ返却) 画面には表示しないが、API の JSON には email が含まれている。DB のレコードをそのままシリアライズして返す実装で起きやすい API3:2023 Broken Object Property Level Authorization

どちらも脆弱性スキャナでは見つけにくい。リクエストもレスポンスも「正常」に見え、問題は「誰がこのデータを見てよいか」という仕様の側にあるから。ここが「仕様の不備」という表現と合う。

なぜ防げなかったか(推定)

海外 IP の遮断は応急処置にすぎない。 攻撃者は国内のプロキシや VPS からでも同じことができるので、根本対策は認可チェックと返す項目の絞り込み。

自分のシステムで確認すること

確認項目やり方
ID を受け取る API はすべて、リクエストした本人のデータかを確かめているかルーティング一覧から ID を受け取るエンドポイントを全件洗い出す。別アカウントでログインして他人の ID を指定し、403/404 になるかを試す。テストにも入れる
レスポンスに画面で使っていない項目が入っていないか開発者ツールで実際の JSON を見る。DB のモデルを丸ごと返さず、返す項目を明示的に列挙する(レスポンス用の DTO・シリアライザで allowlist 方式にする)
外から見える ID が連番になっていないか公開 URL・API の ID を UUID などの推測できない値にする
レート制限があるかユーザー単位・IP 単位で上限を置く。会員情報を返す API は特に厳しくする
大量アクセスに気づけるか1クライアントあたりのリクエスト数、404/403 の急増、特定 API の呼び出し数を監視してアラートを出す
新機能の仕様レビューで認可を見ているか設計レビューのチェックリストに「このデータは誰が見てよいか」「返す項目は最小か」を入れる
API の脆弱性診断を受けているかOWASP API Security Top 10 を観点にした診断を、少なくとも会員情報を扱う機能のリリース前に受ける

利用者がやること

関連する過去の事案

出典